神戸行きの電車に揺られていると、大きなランドセルを背負った小さな女の子が小走りで乗り込んできた。
彼女は座るのももどかしいという風に、手にした本の読みかけのページを開くやいなや、あっと言う間にその本の世界へと引き込まれていった。
おそらく小学一年生くらいの彼女を、そんなにも虜にする本とはいったいどんな本なのだろう?と興味を持ち、それとなく表紙を覗いてみると…
『ぼくらはズッコケ探偵団』
ん!?
なんと、それは私も小学生の頃に読んだことのある『ズッコケ三人組』の本ではないか。
なんとも不思議な、そして懐かしい気持ちになった。
訳もなく彼女とハイタッチしたい気分だったのだが、そういう訳にもいかず(そんな事をしたら確実に不審者である)近づく目的の駅へ降り立つため、後ろ髪を引かれる思いで席を立った。
興奮さめやらぬまま、かなり早く着いたのと電車での出来事もあり、なんとなく駅の本屋へ立ち寄ってみた。
何か面白そうな本はないかなぁと物色していると
『ズッコケ”中年”三人組』
の文字が。
思わず手に取ってみると、どうやら2004年に『ズッコケ三人組の卒業式』で完結したシリーズのその後(続編)として、去年の11月に出版された本のようだ。
なんたる偶然、はたまた必然か。
あの頃小学生だった『ズッコケ三人組』は46歳に。
この本を見つけたのもビックリだが、2004年までシリーズが続いていたとは、何とも驚きである。
本の内容も見ず、あまりの懐かしさに思わず購入してしまった。
他にも2冊の本を買い、足取りも軽く目的地へ向かう道すがら
『あと何十年後かに、文庫本となったこの本をあの娘が手にしてくれたらなぁ…』
と、お得意の妄想に酔いしれながら、小雪ちらつく六甲の街を急ぐわたくしでありました。